頼むお酒なんてなんでもいいんです。
…はい、乱暴ですね。正確に言えば、そのお店に材料さえあれば、なんでもいいのです。お好きなものをご注文ください。
…まだ乱暴に感じることでしょう。
しかしそれでも私はそう思います。
恐らく、バーでどんなお酒を頼んだらいいのか?という疑問を持つ方は、お酒の種類を知らないと注文できない!と思うと同時に
「バーでは〇〇を頼んではいけない」という固定観念があるのではないでしょうか。
例えば
・バーではウーロンハイを頼んではいけない
・バーではカシスオレンジを頼んではいけない、男性は特に
・バーではカルーアミルクを頼んではいけない、男性は特に
・バーでは角ハイボールを頼んではいけない
・(もしかすると)バーでは生ビールを頼んではいけない
表裏一体の固定観念として「バーでは〇〇を頼むのが通だ」というものもあるでしょう。
・やっぱり一杯目はジントニックだよね!
・やっぱりマティーニ頼まなきゃね!
・ウイスキーはストレートかロックだよね!
以上のものが「〜ねばならない」だとしたら、全て都市伝説です!!!
基本的には「居酒屋メニューを頼んではいけない」「だからバーならではのものを頼まなければならない」が根底にありそうですが、そんなことはないのです。
ウーロンハイ、頼んでも大丈夫です!
但しウーロン茶や焼酎を置いていないバーも多いですし、またあったとしても他のものに比べどうしても手持ちの材料では見劣りしてしまうからお出しできない、ということもあるかと思います。なので出来るかどうか確認したほうが無難と言えば無難です。しかし頼んではいけない、ということはありません。
カシスオレンジやカルーアミルクに代表されるような「甘いカクテルを(特に男性が)頼んではいけない」は、それらが居酒屋カクテルの代表格だからでしょう。「ゴッドファーザーを頼んではいけない」とはなりませんもんね。そして甘いカクテルを男が飲むなんて女みたいでダメだ」なんて言ったら今のご時世、男女差別の誹りを免れません。バーで飲む本気のカシスオレンジ(例えば高級なカシスリキュールを生のオレンジをその場でジュースにして割ったものなど)は非常に美味しいです。
バーで角ハイボール、角があればいいと思います!但し、サントリーのお家芸である広告の影響でハイボール=角ハイボールであると思っている方も多いですが、それはバーに行く時は改めておいた方がよいでしょう。ハイボールのようなシンプルなものこそ、お店やバーテンダーの力量が出ます。頼んで嫌がられることはまずないでしょう。
生ビールも頼んで大丈夫です!仕入れたものですから、逆に出ないと困ります(笑)樽出しのビールは一度開栓すると次第に鮮度が落ちていきます。だから出ないと困るんです。あまり注文がないだろうと見越して生ビールを置いていないところがあるくらいです。なので生ビールのサーバーがあるお店ではむしろ積極的に頼んでください(笑)
ジントニックを一杯目?確かに多いです。それはやはり、一件目に居酒屋さん等で「乾杯ビール」をやっているから、バーで仕切り直すならビールでないもので、ということでジントニックになることが多いと思います。実際それに適したカクテルであるとは思います。但しそれをしなければならないなんてことは全くありません。
マティーニ。カクテルの王様として有名です。有名だからこそなんだかわからないけど飲んでみたい、飲まないとダメっぽい…。そう考える人もいらっしゃるかと思います。そうして撃沈して来た方を私は何人も見てきました。
アルコール47度〜のジンと20度前後のヴェルモットを合わせるもので、レシピにもよりますが、恐らく35度は下らないでしょう。
バーテンダーの技量により飲みやすく仕上げることも可能ですが、少なくとも強いお酒に対してあまり経験のない方がサクッと飲めるようにはなりません。なので無理して頼むようなカクテルではありません。
ウイスキーはストレートやロックがオススメであることは多いですが、別にソーダで割ろうと水で割ろうと、ジンジャーエールでもコーラでもいいのです。もちろん中にはコーラ割りなんかしたらバチが当たる!と思える銘柄もありますが、それすら基本的にはお客様の自由だと思います。ただ、バチが当たると思えるものだと分かっていて敢えてするのと、全くの無知でするのでは、周囲の受け取り方が全く違ってくるのでそこは気をつけたほうがいいと思います。
(※蛇足;山崎18年で作ったコークハイはとっても背徳的な味がして美味しかったですwイケナイコトをしている感じ…)
以上のとおり、他にも例はあると思いますが、材料さえあればなんでも大丈夫です。それよりも、お酒なんて全然知らないから何を注文していいかわからないというときは、素直にバーテンダーに相談するといいでしょう。お客様の飲み物を決めるというのもバーテンダーの技量が問われる重要な仕事のひとつです。きちんとしたバーテンダーならば、普段バー以外で飲んでいるものやこれまでに飲んだもので美味しいと思ったものなど、いくつかのヒントがあれば適切な飲み物を選び取ることができます。
そしてそれを美味しいと言ってくれたなら、またそれをヒントに別の似たようなものをお出ししたり、あるいはそればかりだと飽きるので少しひねって意外性のあるものを提案したりすることができます。ですので、飲んでみた感想は率直にバーテンダーに伝えたほうがよいでしょう。気に入らないときに「不味い」とまで言う必要はないと思いますが(※注)、「もっと甘さ控えめの方がいい」「もっと強くても大丈夫」などと言う好みは伝えていただいた方がバーテンダーとしては助かるものです。次はきっとお好みのものを作ってくれるでしょう。
※注:他のお客様がそれを横で聞いたらどういう気持ちになるか考えてくださいね。もし本当に不味かったとしても、隣のお客様が思うのは「え、不味いんだw』ではなく「うわ、何この客」です。好んでその店に来ている常連客なら尚更です。バーテンダーが気にするのは不味いと言われたことよりも、そのお店を選んでいる他のお客様の価値観を否定されることです。
そうしてバーテンダーとコミュニケーションを取りながら自分の好みのお酒を知っていき、またバーテンダー側も好みの通りに作れるようになっていく。これこそがバーの醍醐味のひとつであり、そうすれば、何を頼んだらいいかということは、全く考えないようになるものです。
「何を頼むかは、バーテンダーに聞いてみて決めよう。まああの人なら間違いないしな」という信頼関係が生まれることは、バーテンダーにとってもお客様にとっても幸せなことだと思います。
※蛇足; 気に入らないときに「不味い」とまで言う必要はないとは言ったものの、信頼関係、あるいはその場のノリによってバーテンダーから「これ不味いから飲んでみな(ニヤリ)」という場合もあります(笑)。
そしてそれを出されたお客様が後日、他のお客様に
「何飲んでるんですか?」
と聞かれ、
「これ?不味いんだよ〜w」
…な〜んてこともあります。それもまた酒、そしてバーの奥深いところです。
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